AI
AI関数の使い方・読み方
読み方:AI は「エーアイ」と読みます。(一般的な読み方です。公式に読み仮名の定めはありません)
AI関数は、セルの中でGeminiに指示を出し、その答えをセルに書き込ませる関数です。
Excelでは COPILOT 関数が同じ役割です。書式もライセンス条件も違います。
この記事の書式と対応環境の出どころ(2026-08-28 確認)
- Google スプレッドシート ヘルプ:公式の書式は
AI("プロンプト", [範囲])
https://support.google.com/docs/answer/15877199
関数の仕様は追加・変更されることがあります。書式が合わないときは、上の公式ページで最新をご確認ください。
=SUM(A1:A10) が合計を返すのと同じ場所に、=AI("この文を3語で要約して", A1) と書くと要約が返ってきます。表計算の関数でありながら、答えを計算ではなく生成で作るという点が、これまでのどの関数とも違います。
Excelには同じ名前の関数はありません。Excel側の対応する関数は COPILOT です。書式も条件も違うので、別のページで扱います。
このページの中身(19項目)
書式
=AI("プロンプト", [範囲])
| 引数 | 省略 | 内容 |
|---|---|---|
| プロンプト | 不可 | 何をしてほしいかを書いた指示文 |
| 範囲 | 可 | 指示文が参照するデータの範囲 |
範囲は省略できます。=AI("今日は何曜日か") のように、指示文だけでも動きます。
できること
公式が挙げているのは次の4つです。
| 用途 | 書き方の例 |
|---|---|
| テキストの生成 | =AI("この商品の紹介文を1文で", A2) |
| 情報の要約 | =AI("3行で要約して", B2) |
| 情報の分類 | =AI("この問い合わせを『請求』『不具合』『その他』のどれかに分類して", C2) |
| リアルタイム情報へのアクセス | =AI("この会社の本社所在地は") |
このうち分類がいちばん実務で効きます。問い合わせ・アンケートの自由記述・商品名の表記ゆれといった、条件式では書ききれない仕分けが1列で終わります。
これまで同じことをしようとすると、IFS や SWITCH に条件を並べるか、REGEXMATCH でパターンを書くしかありませんでした。「『動かない』も『起動しない』も『立ち上がらない』も不具合」といった言い換えを人手で列挙する必要があったところが、指示文1行で済みます。
使うための条件
誰でもすぐ使えるわけではありません。公式は次を条件として挙げています。
- 対象となる Google Workspace または Google AI のプランに入っていること
- Workspace Experiments(試験運用プログラム)に参加していること
- 管理者設定・言語設定で制限されていないこと
個人の無料Googleアカウントでは、この関数は候補にも出てきません。関数名を打っても補完されない場合、まずここを疑ってください。
なお、Geminiがスプレッドシートの列を自動で埋める関連機能については、公式に「現在、この機能は米国内において英語でのみご利用いただけます」という記述があります。日本語環境で一部の挙動が違うのは、この差によることがあります。
制限
ここを知らずに使うと事故ります。
1. 元に戻せない
公式に「関数は元に戻すこともやり直すこともできません」とあります。
通常の関数なら、間違えても Ctrl+Z で戻せます。AI関数は戻せません。大きな範囲に一気に流し込む前に、まず1セルで試してください。
2. 最初の350セルまで
「最初の350個のセルのみ生成」されます。1,000行の表に一括で流しても、351行目以降は生成されません。
分割して流すか、FILTER で対象を絞ってから流すことになります。
3. 入れ子にできない
「埋め込みAI関数はサポートされていません」——つまり =AI("...", AI("...")) のような書き方はできません。
段階的に処理したい場合は、作業列を分けてください。1列目でAI関数を使い、その結果を2列目のAI関数が参照する形にします。
4. 回数の上限がある
「短期的および長期的な生成上限」があり、長期の上限に達すると一時的に生成できなくなります。公式の案内は「24時間後にもう一度」です。
5. 答えはテキストだけ
「回答はテキストに限定」されます。数値として計算に使うつもりなら、VALUE などで変換が要ります。
「AI関数は使用できません」と出るとき
公式が原因として挙げているのは次の4つです。上から順に確認してください。
| 確認すること | 見るところ |
|---|---|
| Workspace Experiments に参加しているか | 未参加なら関数自体が使えません |
| AI関数を利用できるプランか | 無料アカウント・一部の有料プランは対象外 |
| 管理者設定・言語設定 | 会社アカウントは管理者が止めている場合があります |
| ファイルの開き方 | Box・Dropbox などの外部クラウドストレージ経由で開いていると使えません |
4つ目は見落としやすいところです。同じファイルでも、Googleドライブから開けば使えて、外部ストレージ経由だと使えません。
既存の関数と、どう使い分けるか
AI関数は強力ですが、既存の関数でできることを置き換えるものではありません。
| やりたいこと | 使うもの | 理由 |
|---|---|---|
| 合計・平均 | SUM / AVERAGE | 計算は毎回同じ答えでなければ困る |
| 条件で抽出 | FILTER / QUERY | 条件が明確なら生成に頼る必要がない |
| 表記ゆれの統一 | SUBSTITUTE → 無理ならAI | 決まった置換で済むならそちらが速い |
| 自由記述の分類 | AI | 言い換えを列挙しきれない |
| 文章の要約 | AI | 既存関数にできない |
判断の基準は「答えが毎回同じでなければ困るか」です。
合計が実行のたびに変わったら困ります。だから計算に生成を使いません。一方、問い合わせの分類は多少ぶれても運用できます。だから生成が向きます。
実務での置き場所
結果を固定する
AI関数は再計算のたびに生成が走る可能性があります。結果を確定させたいときは、生成後に「値のみ貼り付け」で固定してください。
分類結果を COUNTIF で集計する場合、集計のたびに分類が揺れると数が変わります。固定してから集計するのが安全です。
元データは触らない
AI関数の結果は必ず別列に出してください。元の自由記述を上書きすると、生成が外れていたときに戻せません(元に戻せない仕様なので、なおさらです)。
350セルの壁を前提に設計する
1,000行あるなら、最初から3回に分ける前提で作ってください。「一括で流したが途中で止まった」という状態が、いちばん原因を追いにくくなります。
まとめ
- 書式は
=AI("プロンプト", [範囲])。範囲は省略できます - Workspace のプランと Experiments への参加が要ります。無料アカウントでは使えません
- 元に戻せません。必ず1セルで試してから広げてください
- 一度に350セルまで。入れ子にはできません
- 計算には使わないでください。向くのは分類と要約です
「毎回同じ答えが返らない関数」を表に置くということ
表計算の関数は、これまで同じ入力に同じ答えを返すことを前提に作られてきました。=SUM(A1:A10) は何度計算しても同じです。だから安心して他の数式から参照できます。
AI関数はここが違います。同じ指示文でも、返ってくる文が完全に一致するとは限りません。この一点が、置き場所の設計をすべて決めます。
ぶれてもよい場所とは、人が最後に見る場所です。分類のラベル、要約文、下書きの文面。ここは多少の揺れが許容されます。
ぶれてはいけない場所とは、他の数式が参照する場所です。AI関数の出力を VLOOKUP のキーに使うと、揺れがそのまま照合失敗になります。ここに置くなら、値で固定してからにしてください。
分類の指示文の書き方
分類がうまくいかないときは、指示文の書き方が原因のことが多いです。
選択肢を明示するのが最も効きます。
悪い =AI("この問い合わせの種類は", A2)
良い =AI("次のどれか1つだけを答えて:請求/不具合/使い方/その他", A2)
前者は「配送についての問い合わせのようです」といった文が返ってきます。文が返ると集計できません。
後者は語だけが返るので、COUNTIF でそのまま数えられます。
さらに、どれにも当てはまらないときの逃げ道を必ず用意してください。「その他」がないと、無理にどれかへ寄せた答えが返ります。
要約の指示文の書き方
要約は長さと形式を数で指定すると安定します。
=AI("40字以内、体言止めで要約して", A2)
「短く」「簡潔に」といった形容詞は、返ってくる長さが揃いません。表の列に入れるものは、長さが揃っていないと読みにくくなります。
AIの関数を、関数辞典の中でどう位置づけるか
このサイトでは200以上の関数を扱っていますが、AI関数は唯一「答えが決まっていない」関数です。
そのため、他の関数のページとは書き方を変えています。他のページは「この引数にこう書けばこう返る」で説明できます。AI関数は返る内容が固定でないため、「どこに置いてよくて、どこに置いてはいけないか」が説明の中心になります。
関数の一覧はこちらから探せます。目的から逆引きする形にしてあるので、「分類したい」「要約したい」からでも辿り着けます。
業務でよく使う4つの型
指示文をゼロから考えるより、型に当てはめるほうが安定します。実際に使われる形を4つ挙げます。
型1:仕分け(分類)
問い合わせ・アンケート・レビューなど、自由に書かれた文を決まった箱に入れる用途です。
| A(元の文) | B(数式) | |
|---|---|---|
| 2 | 昨日から画面が真っ暗で開けません | =AI("次のどれか1つだけ:不具合/請求/使い方/その他", A2) |
| 3 | 先月の請求額が二重になっています | 同上 |
| 4 | エクスポートのやり方を教えてください | 同上 |
返ってくるのは「不具合」「請求」「使い方」といった語だけです。これを COUNTIF で数えれば、そのまま件数の集計になります。
=COUNTIF(B2:B200, "不具合")
分類とカウントを分けるのが要点です。AI関数に「不具合が何件あるか数えて」と聞いてはいけません。数えるのは COUNTIF の仕事で、そちらは必ず正確です。
型2:抜き出し
住所から市区町村だけ、文章から日付だけ、といった一部を取り出す用途です。
=AI("この文に出てくる日付だけを YYYY-MM-DD 形式で1つ返して。無ければ空欄", A2)
これまで REGEXEXTRACT で書いていた処理の一部が、指示文で置き換えられます。
ただし表記が完全に決まっているなら REGEXEXTRACT のほうが確実です。「2026/08/28」しか出てこないと分かっている列に、生成を使う理由はありません。
AI関数が効くのは、「8月28日」「8/28」「令和8年8月28日」が混在しているときです。パターンを列挙しきれないときだけ使ってください。
型3:言い換え・整形
同じ意味の文を、決まった形に揃える用途です。
=AI("30字以内、です・ます調、体言止めにしない", A2)
商品説明・社内報告・メール文面の下書きなどで使います。最終的に人が直す前提なので、多少ぶれても運用できます。
型4:判定
「この文にクレームが含まれるか」を TRUE / FALSE で返させる形です。
=AI("この文が苦情を含むなら TRUE、含まないなら FALSE。他の語は返さない", A2)
返ってくるのは文字列の “TRUE” なので、そのままでは論理値ではありません。判定に使うなら比較してください。
=IF(B2="TRUE", "要対応", "")
IF と組み合わせる形になります。
エラーと、その原因
#ERROR! が返る
引数の書き方が壊れています。指示文をダブルクォートで囲み忘れているのがいちばん多い原因です。
誤 =AI(この文を要約して, A2)
正 =AI("この文を要約して", A2)
指示文の中でダブルクォートを使いたいときは、2つ重ねます。
=AI("『""不具合""』という語が含まれるか判定して", A2)
途中の行から空欄になる
350セルの上限に当たっています。エラーは出ず、静かに止まります。
「途中まで動いていたのに」という形で気づくことが多いので、先に何行あるか数えてから流してください。
=COUNTA(A2:A1000)
COUNTA で件数を確認し、350を超えるなら分割します。
しばらくすると結果が消える/変わる
再計算が走っています。確定させたい結果は値で固定してください。
範囲を選択して Ctrl+C → 右クリック → 「特殊貼り付け」→「値のみ貼り付け」です。
何も返らない、関数名が候補に出ない
プランまたは Workspace Experiments の問題です。前述の4項目を上から確認してください。外部クラウドストレージ経由で開いているという原因は、ここで見落とされがちです。
速度と件数の考え方
AI関数は、通常の関数とくらべて明確に遅いです。
=SUM(A1:A1000) は一瞬で返りますが、AI関数は1セルずつ生成が走ります。100行流せば100回の生成です。
そのため、表を開くたびに全行を再生成する構造にしないでください。次の形にすると、開くたびに待たされます。
- AI関数の結果を、別の数式が毎回参照している
- AI関数の入っている列を並べ替えの対象にしている
生成 → 値で固定 → 以降は固定した値を使う、という流れにするのが基本です。
他の関数と組み合わせる
対象を絞ってから流す
全行に流す前に、FILTER で対象を絞ると、350セルの上限に当たりにくくなります。
=FILTER(A2:A1000, B2:B1000="未処理")
未処理のものだけ抜き出してから、その結果にAI関数を当てます。
結果を集計する
分類した結果は、COUNTIF や COUNTIFS でそのまま数えられます。月別に見たいなら SUMIFS と日付列を組み合わせます。
重複を取り除く
生成した語に表記ゆれが出ることがあります。UNIQUE で実際に何種類返ってきたかを確認してください。
=UNIQUE(B2:B200)
「請求」と「請求関連」が混ざっているといったことが、ここで分かります。混ざるようなら、指示文の選択肢の書き方を直します。
よくある質問
Q. 無料のGoogleアカウントで使えますか
使えません。対象となる Google Workspace または Google AI のプランが要ります。
Q. 数式の中で計算に使えますか
避けてください。公式も回答をテキストに限定しています。合計・平均・割合は SUM や AVERAGE を使ってください。
Q. 結果が毎回変わるのは不具合ですか
仕様です。生成する関数なので、同じ入力に同じ出力が返る保証はありません。固定したい場合は値で貼り付けてください。
Q. 何行まで流せますか
一度に350セルまでです。それを超える分は生成されません。
Q. Excelでも同じことができますか
COPILOT 関数があります。書式も必要なライセンスも違うので、そちらのページを参照してください。
通しでやってみる:問い合わせ200件を仕分ける
実際の手順を、最初から最後まで通します。200件の問い合わせを種類別に集計するという、いちばんよくある作業です。
1. 元データを確認する
| A(受付日) | B(本文) | |
|---|---|---|
| 1 | 受付日 | 本文 |
| 2 | 2026-08-01 | ログインしようとするとエラーが出ます |
| 3 | 2026-08-01 | 領収書の宛名を変更したいです |
| 4 | 2026-08-02 | アプリが起動しません |
まず件数を数えます。350を超えるかどうかで手順が変わるためです。
=COUNTA(B2:B1000)
200件と分かったので、一度に流せます。
2. 1件だけで試す
いきなり全部に流さないでください。元に戻せません。
C2に1つだけ書いて、返り方を見ます。
=AI("次のどれか1つだけを答えて:不具合/請求/使い方/その他", B2)
「不具合」と1語で返れば成功です。「不具合に関するお問い合わせですね」のように文で返ったら、指示文を直します。「1つだけ」「他の語は返さない」を足すと締まります。
3. 全件に広げる
C2の数式をC201までコピーします。生成が終わるまで待ちます。
4. 何種類返ってきたかを見る
=UNIQUE(C2:C201)
ここで指定した4種類以外が混ざっていないかを確認します。「不具合」「請求」「使い方」「その他」の4つだけなら成功です。
「障害」「トラブル」が混ざっていたら、指示文の選択肢を守れていません。その場合は指示文を直して、もう一度流します。
5. 値で固定する
C列を選択 → Ctrl+C → 特殊貼り付け → 値のみ貼り付け。
これをしないと、以降の集計が実行のたびに変わる可能性があります。
6. 集計する
=COUNTIF($C$2:$C$201, E2)
E列に「不具合/請求/使い方/その他」を並べ、F列でこの式を使えば件数が出ます。
月別に見たいなら COUNTIFS に日付条件を足します。
=COUNTIFS($C$2:$C$201, E2, $A$2:$A$201, ">="&DATE(2026,8,1), $A$2:$A$201, "<="&EOMONTH(DATE(2026,8,1),0))
EOMONTH で月末を出しているので、月をまたいでも式を書き換えずに済みます。
この手順の要点
生成するところと、数えるところを分けています。
分類はAI関数、集計は COUNTIF。「何件あるか」をAIに聞かないのは、数えるのは既存の関数が確実だからです。生成が向く仕事と、計算が向く仕事を混ぜないでください。
使う前に決めておくこと
導入前に、次の3つを決めておくと後で困りません。
| 決めること | なぜ |
|---|---|
| どの列がAIの結果か | 見た目で区別が付かないと、生成物と実データが混ざります。列名に「(自動分類)」と入れる、背景色を変えるなど |
| いつ固定するか | 固定の時期を決めないと、集計値がいつのまにか変わります |
| 外れたときどうするか | 分類が違っていたとき、人が直すのか、指示文を直して流し直すのか |
3つ目が特に大事です。AI関数の結果は完璧にはなりません。「9割合っていれば運用できる」仕事に使い、「1件でも外れたら困る」仕事には使わないでください。
請求金額の判定、法的な判断、人事評価——外れたときの損害が大きい用途には向きません。これはExcelの COPILOT 関数についても、Microsoftが公式に同じ趣旨の注意を書いています。